ついに100億円突破——体験型エンタメ市場の現在地
2025年、謎解き・脱出ゲームを中心とした体験型エンタメの日本市場規模が、ついに100億円の大台を突破しました。
IGDA日本(国際ゲーム開発者協会日本)の調査によると、2025年の売上規模は101.5億円(前年比約13%増)。テレビ朝日でも「100億円市場」として特集されるなど、体験型エンタメが一般メディアで取り上げられる機会も増えています。
このレポートでは、謎解き・脱出ゲーム・マーダーミステリー・イマーシブシアターの各ジャンルの動向と、市場全体を動かすトレンドをまとめます。
ジャンル別動向
謎解き・脱出ゲーム
体験型エンタメ市場の中心的存在として、引き続き安定した成長を続けています。
コロナ禍を経て、店舗公演はほぼコロナ前の水準に戻りました。さらに「パッケージ謎解き」(自宅で楽しめる謎解きキット)というジャンルが新たに定着し、市場の裾野が広がっています。
大企業・自治体との連携も活発で、東京メトロとのコラボ「地下謎への招待状」は過去8回の開催で延べ51万人以上が参加するなど、街を舞台にした周遊型謎解きが地方創生の手段としても注目されています。また、アニメ・ゲームなどの人気IPとのコラボ企画も増加し、新規層の取り込みに貢献しています。
マーダーミステリー(マダミス)
体験型エンタメの中で、ここ数年で最も急成長したジャンルです。
コロナ禍にオンラインプレイが普及して認知が広がり、アフターコロナで対面プレイが復活。YouTuberや配信者がマダミス体験を発信したことで、従来の謎解き・TRPG愛好者以外の層にも広がりました。
中国ではマーダーミステリーが遊べる店舗が3万店舗以上とも言われており、日本でも同様の大規模普及が起きるとの見方もあります。今後の鍵は、コアな界隈からさらに一般層への広がりがどこまで進むかです。
イマーシブシアター
2024年最大のトピックは、お台場のヴィーナスフォート跡地に開業した「イマーシブ・フォート東京」です。USJ再建で知られる森岡毅氏率いる株式会社刀が手がけた常設型のイマーシブシアターで、その登場はイマーシブ体験の一般層への認知拡大に大きく貢献しました。
一方で同施設は2026年2月に営業を終了しています。当初は大人数向けの「ライトな体験」が主需要になると想定していたものの、実際は少人数限定の「ディープな体験」への需要が集中し、施設規模と事業モデルの見直しを余儀なくされました。
この事例は「体験の深さと施設規模のバランス」「ターゲット設定の精度」が事業の成否を分けることを示す、業界全体にとって重要な先行事例となっています。
市場を動かす4つのトレンド
① トキ消費・コト消費の定着
その瞬間にしか味わえない体験に価値を見出す「トキ消費」が定着しています。体験型エンタメはデジタルコンテンツに代替されにくく、リアルの場でしか得られない体験として強い優位性を持っています。
② IPコラボの加速
アニメ・ゲーム・映画などの人気IPと体験型エンタメのコラボが増加しています。既存ファンを取り込みながら新規層を開拓するこの手法は今後も主要なマーケティング手法として定着していくと見られます。
③ テクノロジーとの融合
AIヒントシステム・VR・ARなどの技術導入が段階的に進んでいます。GPS連動の野外謎解きや、VR/ARを組み合わせた新しい没入体験も登場しており、体験の幅が広がっています。
④ 大型フェス化・大規模化の流れ
以前はアマチュア主体だった体験型エンタメのフェスに企業が参入し、大規模化する流れが出てきています。体験型エンタメが「イベント」から「産業」へと成熟しつつあることの表れです。
今後の展望
日本の体験型エンタメ市場は、初の100億円突破という節目を超えてさらなる拡大が期待されます。一般層への認知が広がるほど市場の裾野は広がりますが、一方で「どんな体験を・誰に・どんな規模で提供するか」という設計の精度がより重要になる段階に入っています。
えくすぺでは引き続き、業界の最新動向を定期的にお届けします。
まとめ
- 体験型エンタメ(謎解き・脱出ゲーム中心)の日本市場規模は2025年に101.5億円で初の100億円突破(IGDA日本調べ)
- 謎解き・脱出ゲームはパッケージ化・周遊型など新形態が定着し裾野が拡大
- マーダーミステリーはSNS・YouTube経由で一般層への認知が急拡大中
- イマーシブシアターは可能性と課題を同時に示す転換期にある
- トキ消費・IPコラボ・テクノロジー融合・大規模化が市場の4大トレンド
※本記事のデータはIGDA日本をはじめとする各種公開情報をもとに作成しています。市場規模の数値は調査機関・定義によって異なる場合があります。


